風化風葬

つたえきれない

ドイツの日曜日

ドイツが好きだ。行ったことはない。言語が好きだ。すべてのものに性がある。中性名詞なんて存在がたまらない。身近な単語の性を調べるだけでハッとする。好きなものが女性名詞だとなんだか嬉しくなる。スカートが男性名詞だったりして歴史のニオイを感じる。英語に近いところも好きだ。ついついYesじゃなくてJaと言いたくなる。ドイツの文化も良い。特に食料品。じゃがいも。ソーセージ。パン。ビール。ワイン。ケーキ。チョコレート?なんだかそんなイメージ。シンプルな塩味。じっくり煮込んだ愛情の味。冬のミュンヘンクリスマス市の空気がとても好きだ。クリスマスの文化は素敵だ。日曜日にしっかり休む生活も素敵だ。調べれば調べるほどのめりこむ。歴史も深い。ヒトラーも好きだ。スターリンのほうが好きだけれど、なんだかその辺のハチャメチャだった人たちはみんな好きだ。東西に分かれていた時代の話や、写真を見るのも好きだ。グッバイレーニンという映画は、生活文化がよく出ていて面白かった。ニセドイツという本も楽しい。実際に壁を作って隔てるなんてことをした国はドイツくらいだろう。ドイツ人、ドイツ製、ドイツ発祥、という響きだけでときめく。ドイツに恋している。いつか絶対に行きたい。お金があればドイツで暮らすのもいい。そんな夢を膨らませているだけで、おなかがいっぱいになる。

煙草のニオイが髪の毛に染み付いてとれないように、過去は私に染み付くケムリなのかもしれない。どんなに消しても、それはきっと消えない味。悲しい悔しい苦しいことがもう毎日あって、あんなに嬉しかった思い出が悲しい過去になってしまったとき、自分の表情を知る。それはもう、孤独の顔をしている。

どうやら、日記というのは悲しいときに書くものらしかった。

藍坊主/星のすみか